あきらめるって、終わりじゃない。

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「オレ、もう無理です」
彼がそう言ったのは、定期テスト1週間前の夜だった。

部活から帰ってきた制服のまま、
カバンじゃなくて、
“重たい空気”を背負って教室に入ってきた。

目は、腫れていた。

彼の名前はSくん。中3。
勉強は決して得意じゃない。
でも、ずっと一緒に頑張ってきた。

第1志望の公立高校。
倍率高め。
偏差値、あと8足りない。

「もう、オレ、ムリっすわ。たぶん間に合わないっす」
彼は笑ってた。
でも、笑顔の形をした、あきらめだった。

わかるよ、その気持ち。
でもな、オレは、そんな簡単に納得しねぇ。

「諦めるな」なんて言わねぇ。

むしろ──
ちゃんと“諦めてもいい理由”を持て。


「あきらめる」って、“選び直す”ってことだ。

みんな、「あきらめる=悪」って思ってない?

「途中でやめるやつは負け組」
「頑張れば報われる」
「最後までやりきれ」

でも現実は違う。

頑張っても、
届かないことなんて、
いくらでもある。

それを責めるんじゃなくて、
「自分にはこれが合ってる」って見極めて進むこと。

それが、ほんとの“あきらめる”だと思う。

漢字で書くと『明らめる』。
つまり、「ハッキリさせる」って意味。

ゴールを見直すこと。
自分に合った道を見つけ直すこと。
それが、“終わり”なんかじゃない。

“再スタート”だ。


「行きたかった学校」に、行かない決断

Sくんは、ずっとその高校に憧れていた。
文化祭にも行った。
パンフレットはボロボロになるまで見た。
しつこい位 その高校の話は聞いているので
気持ちは私が一番理解している。

でも模試の結果は、E判定。
あと1回しかチャンスがなかった。

夜中にLINEがきた。

『先生、もしこのままE判定だったら、志望校を変えた方がいいですか?』
『“好き”だけじゃ受からないっすよね』

オレは、返信しなかった。

言葉が見つからなかったんじゃない。
彼が“本気で向き合ってる”って思ったから。

翌朝、教室で目が合った瞬間、
彼が言った。

「先生、オレ、志望校を変えます」
「悔しいけど──たぶん、それが今の自分っす」

声、震えてた。
でも、顔は前を向いてた。

それが、“諦めた”ってことか?
違う。
彼は、“選び直した”んだ。

自分で、自分の未来を。


親の涙と、子のプライド

面談の日。
お母さんが泣きながらこう言った。

「先生、本当にこのままでいいんでしょうか…」
「第一志望、あんなに夢中だったのに」

でも、その隣で彼は静かに言った。

「オレ、自分で決めたから、後悔しない」
「それに、勉強もっと頑張れるかもって思ってる」

その瞬間、お母さんの涙が止まった。

「そうね…じゃあ、全力で応援するわ」

大人になるって、こういうことなのかもしれない。

“泣きながらでも、自分の道を選ぶ強さ”
それが、子どもを大人にする。


あきらめることで、見えてくる景色がある

第一志望は、落ちたわけじゃない。
自分で手放したんだ。

でもその代わり、
彼は“プライド”っていう大事なもんを手に入れた。

「自分で決めた」っていう誇り。

その日から彼の勉強量、爆増。
授業中も、質問の嵐。
提出物、ALL即提出。

彼の入試の結果は──
『合格』。

教室で結果を聞いたとき、
彼はいつもの口調で言った。

「まぁ、受かると思ってましたよ」
でも、目は潤んでた。

あきらめたことで、手に入れた未来があった。


“限界”の先にあるのは、絶望じゃない。

諦めるって言葉は、
「終わり」とか「逃げ」とかじゃない。

限界を知って、
ちゃんと選び直すこと。

無理をやみくもに続けるんじゃなく、
“可能性のある道”を、もう一度見つける勇気。

それを、
あきらめる=あきらかにするって言うんじゃないかな。

そしてオレは、こう言いたい。

逃げたって、また立てばいい。

道を変えたっていい。
引き返したっていい。
一回座り込んで、泣いたっていい。

でも、
自分で立ち上がったら、それが全部“意味”になる。


あなたに聞きたい。

あなたが、あきらめたことって何ですか?

それ、ほんとうに「負け」でしたか?
それとも、「選び直し」でしたか?

この物語が、
誰かの“心の再起動”になったら嬉しい。

感想、届かせてください。
あなたの“あきらめ物語”も、きっと誰かを救うから。

逃げたっていい。
選び直していい。
そしてまた──進め。


でも、ここからがスタート。

ここまで読んでくれて、本当にありがとう。

この「逃げんじゃねーよ」は、
過去の自分に、
そして、今悩んでる誰かに届けたくて始めた物語です。

感想はXでもDMでも、校門の前でもOK。
届けてくれたら、ちゃんと受け止める。

ここで終わらない。

あなたと一緒に、また始めるために。

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